悪いことをした奴に“恩赦”なんて、本当に必要?
天皇陛下の即位に伴う10月22日の「即位礼正殿の儀」に合わせ、“恩赦”を行うことが政府により決定・実施されます。そもそも“恩赦”という言葉は知っているけれど、詳しく分からない・・・という人も多いのではないでしょうか。
SNS上でも、
「服役中の人が出て来るの?」
「悪いことをした奴が罪を償わないなんておかしい」
「なんで今の時代に恩赦が必要なの?」
という、様々な声が聞こえてきます。
そこで、今回は、「天皇即位に伴う恩赦」がどういうものなのかを、紹介していこうと思います。
そもそも恩赦ってなに?
「悪いことをしたのがチャラになる♪」・・・そんなイメージがある“恩赦”。
新聞などを読んでもイマイチよくわからず、どんな人や罪が対象になるのか、また、自分たちの生活には何か影響が出て来るのか気になるところですよね。
そもそも恩赦とはどういうものなのでしょうか。
調べてみましたが、どのメディアも言葉がむずかしい・・・。
一番分かりやすかったのが大辞林第三版の解説でした。↓
確定した刑の全部または一部を消滅させること。内閣が決定し、天皇の認証により行う。大赦・特赦・減刑と刑の執行の免除および復権の五種がある。奈良・平安時代には、天皇の権限で慶事や凶事に際して行われた。
恩赦は「日本国憲法」に規定されており、具体化する法律として「恩赦法」というのが制定されています。
また、「恩赦」といっても、色々な分類があります。(細かく描くと難しいので今回は省略。)
恩赦の目的は?
恩赦は、国のお祝いごとの時に「慶弔を分かち合う」ことを目的に行われます。
第二次世界大戦の後は、有罪判決を受けた人の裁判の内容や効力を変更することが重視されてきました。
今回の恩赦も、法務省によれば「天皇陛下の即位にあたり、罪を犯した人間の改善更正の意欲を高めさせ、社会復帰を促進する」ことを目的としています。
「恩赦」のはじまりはいつ?
恩赦がはじめて執行されたのは、奈良時代の頃(710年~)だと言われています。
今の憲法の元では11回目で、前回の恩赦は、1993年に両陛下が結婚して以来26年ぶりとなります。

そんなに頻繁に行われているものではないのね。
過去の恩赦では批判も・・・
過去に行われた恩赦では、沢山の批判の声が挙がりました。

真面目に生きている人にとっては、恩赦にいいイメージはないわよね。

政治家びいきの恩赦には、国民から特に多くの批判があがったの。
【世論調査】恩赦「反対」は過半数 朝日新聞社の調査https://t.co/CiCFi30oVD
政府が天皇陛下の即位にあわせて恩赦を行うことについて「反対」が54%、「賛成」は25%という結果になった。今回は55万人に実施されることになっている。 pic.twitter.com/Xv0s6vgCVt
— ライブドアニュース (@livedoornews) October 21, 2019
「昭和天皇御大喪恩赦」では、公職選挙法違反の人の恩赦が行われ、約1万5000人の公職選挙法違反者が復権しました。その為、公選法違反者の救済がメインだったのでは?という批判が噴出しました。
「今上天皇御即位恩赦」では、その年に行われた衆議院議員選挙の公選法違反で罰金刑を受けた人に対しても恩赦があったことから、政治恩赦だ!との批判が噴出しました。
今回「恩赦」を受けるのはどんな人?
今回「恩赦」の対象となる人は、およそ55万人。

意外と多いっ!!
施行される恩赦は、「制令恩赦」と「特別基準恩赦」に分けられています。
では、ここからはこの2種類の恩赦について見ていきましょう。
今回の恩赦は「制令恩赦」の復権がメイン
今回の恩赦では、「制令恩赦」の復権がメインとなります。
復権とは、喪失・停止となった国家資格などを再び取得できる状態になること。(今回の恩赦では、犯罪の種類は問われません。)
通常5年は国家資格が取得できませんが、今回の恩赦により制限が回復し(下記参照のような条件はありますが)、国家資格を取得できるようになります。
公選法違反で失われた公民権も回復します。
今の時代に恩赦があること自体が許しがたいのですが、とりわけ公職選挙法違反約430人の公民権回復は絶対許せないなあ。
恩赦55万人決定=3年経過罰金刑に絞る-即位礼の22日実施・政府:時事ドットコム https://t.co/RDlf2EkhlP @jijicomより
— 白石草 (@hamemen) October 18, 2019
今回の恩赦を受けられる人の条件
・2016年10月21日までに罰金を収めた人
・その後3年間再犯していないこと
(1) 恩赦の種類を復権のみに限定(大赦及び減刑は行わない)
(2) 恩赦の対象を,罰金刑のみ,かつ,刑の執行終了又は執行の免除から令和元年10月22日の前日までに3年以上を経過している者のみに限定
約8割が交通違反・・・公職選挙法違反者も恩赦を受ける
今回の恩赦によって恩赦を受ける人の約8割が、速度超過や酒気帯びなど交通事件で罰金刑を受けた人だと言われています。この恩赦の恩恵を受けられると思い「ラッキー♪」と喜んでいるかもしれません。しかし、
免許取り消しなどの行政処分が取り消される
違反金が返ってくる
ということは、一切ありません!!
あくまでも「裁判により確定した刑罰・刑事処分が対象」となります。
個別に審査が行われる「特別基準恩赦」とは
病気などで回復の見込みが低いと思われる受刑者、刑の執行が長期間停止されている高齢の受刑者など、個々の事情を審査して恩赦が行われます。(但し、自分出願が必要)
今回の恩赦では、約1000人が対象と言われています。

刑務所にいても罪を償える状態にないような状態の人への恩赦は、いたしかたない部分もあるのかも・・・。

最近では、高齢者の犯罪が増加し、刑務所が老人ホームのようになっているという状況も問題視されているわ。
(1) 病気等で長期間刑の執行が停止され,なお長期にわたり執行困難な者に対する,刑の執行の免除
(2) 刑を受けたことが社会生活上の障害となっている罰金刑の執行終了者に対する,復権
前科が消えたり刑務所から出てきたりするの?
今回の恩赦では、前科が消失したり、大赦(刑務所に入っている人が出てくる)、減刑(刑罰を軽くする)は行われません。しかし、特別基準恩赦により、一部の受刑者は恩恵を受けることができます。
「犯罪被害者やその御遺族の心情等に配慮」した恩赦に
今回行われる恩赦では、法務省が「犯罪被害者やその御遺族の心情等に配慮」という文言を用いて恩赦の内容をホームページに掲載しました。
55万人もの人が対象となることで、「どうしてそんなに沢山の人が恩恵を受けるの!?」と憤った人も多いでしょう。
しかし、批判の多きい「大赦」(政令で定めた種類の罪の、有罪言い渡し効力を失わせる)や「特赦」(特定の個人に対し、有罪言い渡しの効力を失わせる)を除くことで、犯罪被害者の気持ちに寄り添ったとも言えます。

それでも被害者がいる罪の場合は、傷つく人もいるでしょう。
専門家によると、恩赦を行うことは、「スムーズな社会復帰を促すことで再犯が低くなり、社会秩序の安定に繋がる」といったメリットもあると言われています。

本当ですか・・・・?(眉唾)
「恩赦」を受けた人はその分社会に還元を!
今回の恩赦の施行日は、2019年10月22日。
恩赦は、三権分立の制度を無視していることや、政治利用に関しても問題視されています。
恩赦:恩赦が正当化されるなら、裁判の量刑の決定が妥当でないことになる。裁判の量刑の決定が妥当なものなら、恩赦を行うべき根拠はない。
— 孫崎 享 (@magosaki_ukeru) October 21, 2019

天皇陛下の慈悲という意味合いに、疑問を持つ人も・・・。
しかし、恩赦は数年~数十年に1回しか行われず、(今回は)更生保護を目的として行われることで、批判は一時的なものになると思われます。
真面目に生きている人達にとっては腹がたつこともありますが、今回の恩赦が反省を促し、社会の安定につながるよう、恩恵を受けた人達は襟を正して欲しいものです。
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